白内障手術
眼は高性能なカメラです。角膜(黒目)及び水晶体という2枚のレンズを通して眼の奥にある網膜というフィルムに映像を移すことで私達は物を見ています。
白内障とは水晶体という眼内のレンズが濁り、ぼやけた映像が網膜に届くため、霞(かすみ)、眩しさ、2重3重に物が見えたりといった様々な症状を呈する病気です。
原因は打撲、炎症、アトピーのある方等様々ですが、基本的には加齢とともに生じてきます。人間は年をとれば徐々にしわが出てくるのと同じで白内障も徐々に進行してきます。
点眼治療をされる方もいらっしゃいますが基本的には進行の予防であって白内障を治すことはできませんので白内障が原因で視力低下が生じれば治療は手術しかありません。手術の方法は物理的に濁った水晶体を取り出して代わりに透明なレンズを入れる手術です。
手術時間は症例にもよりますが10分弱で終了することがほとんどです。術後はしばらく休憩していただき問題なければ帰宅していただいけます。もちろん入院治療が必要な方も多くおられます。その場合は長年当院と地域連携をしていただいている大阪医科大学附属病院、高槻赤十字病院、北摂総合病院、高槻病院等の総合病院へ紹介させていただきます。
当院では多焦点レンズを用いた白内障手術を行っております
●多焦点レンズの見え方
〇遠方の他に近方にもピントが合う場所があります
近方は眼前30cm、40cm、50cm辺りのどこかを選んでいただきます。
〇夜間にハロー・グレアが見えることがあります
ハロー:光の周りに輪っかが見える現象
グレア:光がぎらつき眩しく見える現象
〇コントラストがやや低下します
光学的なロスが生じますのでその分コントラストが低下します。
当院で扱っている多焦点レンズ
Johnson & Johnson vision社
①Tecnis Multifocal(テクニス マルチフォーカル)
遠方の他に近方33cm、42cm、50cmのどこかにピントの合う眼内レンズです。ライフスタイルに応じて選択いただきます。
②Tecnis Symfony(テクニスオプティブルーシンフォニー)
遠方から近方66cmまでの距離が自然に見えるように設計された焦点深度拡張型の眼内レンズです。今までのレンズに比べてコントラスト感度の低下やハローグレアが最小限に抑えられています。
Alcon社
③Pan Optics(パンオプティクス)
遠方と近方40cmに加えて60cmの距離にも焦点があっており、40cm~80cmの連続した焦点距離の見え方の質がようくなるよう設計されており、PC等中間距離を見たいというニーズがある方にも選択しやすい国内初の厚労省認可3焦点眼内レンズです。
手術料金(選定療養)
AMO社 テクニスマルチフォーカル | 165,000円 |
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AMO社 テクニスシンフォニー | 198,000円 |
AMO社 テクニスシンフォニー トーリック | 242,000円 |
AMO社 パンオプティクス | 264,000円 |
AMO社 パンオプティクス トーリック | 319,000円 |
※通常の白内障手術の自己負担分の料金に加えて、手術に使用する多焦点レンズの料金(単焦点レンズとの差額) 及び多焦点レンズを用いる際に必要な検査料金を追加でお支払いいただきます。当院は多焦点レンズの白内障手術を行う医療機関として届け出をしています。ご希望があれば診察時にお聞きくだされば詳細をご説明いたします。
※生命保険会社の先進医療特約は使用できなくなっておりますのでご注意ください。
白内障手術の自己負担について
→保険適用外部分(自己負担)
→保険適用部分
保険診察
・手術代金(レンズ代込)
・術前後検査・処方
選定療養
・手術代金・術前後検査・処方
・多焦点レンズに係る費用
自由診察
・手術代金・術前後検査・処方
・多焦点レンズに係る費用
・術後3か月間の検査・処方
合併症
現在の白内障手術は術式としてほぼ完成しており滅多なことはほとんどありませんが100%の手術は存在しません。中には失明するような致命的な合併症もわずかですが存在しますので以下におこりうる合併症について説明します。
①白目が赤い
わずかですが切開をしますので出血で白目が赤くなることがあります。1-2週間の経過観察で自然に吸収しますが血液をさらさらにする薬を内服されている方は数週間かかることもあります。
②ゴロゴロする
わずかですが切開をしますのでその部分が擦れて違和感がでることがありますが傷の治りに伴って消えていきます。
③眼圧上昇
術後は眼内の状況が変動しますので眼圧も高くなることがあります。高すぎる場合は眼圧を下げる点眼や内服を処方することがあります。
④角膜浮腫
手術は角膜の直下で行いますので術後角膜に炎症が起こります。人によっては炎症が強めにでて角膜がむくんで一時的に視力が低下することがありますが炎症を抑える点眼及び内服することで徐々に改善していきます。
⑤チン小帯断裂
水晶体の入っている袋である水晶体嚢は眼の中にチン小帯という紐(ひも)で眼の中にぶら下がっています。チン小帯も人間の組織ですので人によっては弱っていることがあります。程度によっては水晶体嚢に眼内レンズを挿入することが危険な場合がありますのでその際は後日眼内レンズを眼の中に縫いつける(縫着)手術が追加で必要になることがあります。生まれつき組織が弱い方、外傷歴のある方、白内障が極端に進行している方にみられることが多いですが何もない方にもみられます。
⑥後嚢破損
水晶体を機械で吸い取る際に水晶体を吸引することで水晶体嚢が破れることがあります。その際は後ろにある硝子体(水晶体の後方にあるゲル状の組織)を追加処理することがあります。眼内レンズは水晶体嚢の状態によって挿入もしくは⑤と同様に縫着します。
⑦水晶体落下
⑤や⑥の際に水晶体の一部が術中眼底に落下することがあります。少量であれば経過観察で吸収しますが大きな場合は硝子体手術を追加して落下した水晶体を除去する必要があります。
⑧感染
術後傷口からバイ菌が眼内に侵入し感染をおこすことがあります。急激にかすみが生じ視力低下、充血、眼痛が起こります。放置することで感染が広がり失明につながることがありますので一刻も早く再手術して眼を抗生剤で洗う必要があります。頻度は3000分の1程度とごく稀ですが術後急激な変化があった場合は必ずご連絡ください。
⑨駆逐性出血
手術中に眼圧が変動することで眼の奥の動脈が切れて眼内に多量に出血することがあります。放置すると眼内の組織が出血に押されて眼外へでてきてしまう為、傷口を縫合して手術は中止となります。後日出血に対して追加手術を行うこともありますが網膜が傷んでしまうので失明もしくは大幅に視力が低下する可能性がある危険な合併症です。機械が進歩しているため以前に比べて10000分の1程度と頻度は低下していますが術中にいきんだり、せき込んだりと眼内圧の急激な変化はリスクとなりますのでリラックスして手術を受けましょう。
⑩水泡性角膜症
術後には角膜の内皮細胞(眼を透明に維持する作用がある角膜の細胞)が一定量減少します。内皮細胞は再生しないため、術前から内皮細胞が少ない人の場合は角膜を透明に維持できなくなり角膜が白く濁ってきます。これを水泡性角膜症といい角膜移植が必要となります。ごくまれですが術前に内皮細胞の状態を確認しますのでリスクの高い方にはあらかじめお伝えします。
⑪屈折異常
術後は眼が若返るわけではありませんので老眼は治りません。また加齢に伴って元々乱視が生じている方も多い為、見え方によっては遠方用、近方用、もしくはその両方の眼鏡による矯正が必要となります。
⑫レンズ度数の誤差
強度の近視、遠視の方に多いのですが術前に決めたピントの位置と術後の実際のピントの位置に大幅なズレが生じることがあります。その際は挿入したレンズを入れ替えることがあります。
⑬黄斑浮腫
術後に眼の奥にむくみ(浮腫)が生じることがあります。予防的に術後点眼を行いますが、むくみが生じてしまった場合はステロイド注射で加療することもあります。
注意事項
①手術をすればそれでいいというものではありません。術後しばらくは点眼が必要ですので無駄な合併症を防ぐためにも医師の指示に従ってください。
②術後1週間程度は洗顔・洗髪は控えていただき、ほこりやバイ菌が入らないように保護眼鏡をしていただきます。
③車の運転は見えれば3日後位からでもしていただいて結構です。
まぶたの手術
当院で行っている「まぶたの手術」は以下のものがあります。何か気になることがあれば気軽にご相談ください。
(1) 眼瞼腫瘍:眼瞼のほくろやいぼを切除し、必要に応じて縫合します。組織検査で悪性のものがないか確認します。1/100以下の確率と稀ですが、万一悪性所見を認めた場合は追加治療が必要ですので専門の施設へ紹介させていただきます。
(2) 上眼瞼皮膚弛緩症:眼瞼の皮膚が弛んで余っていることで視界を遮ったり眼瞼が重だるくなることがあります。当院では局所麻酔の注射を行った後に2通りの手術方法で治療しています。
(ⅰ) 上眼瞼形成術(2重のラインで皮膚を切り取ります)
(ⅱ) 眉毛下リフト(眉毛に沿って切開して皮膚を切り取ります。厚い皮膚の方にお勧めです)
(3) 退行性眼瞼下垂:何らかの原因で眼瞼を挙げる筋肉の腱膜(挙筋腱膜)が弛んで筋肉の力が伝わりにくくなって眼瞼が垂れ下がってきます。手術では弛んだ腱膜を縫い縮めて力を伝わりやすくして瞼を挙がりやすくします。両眼を一度に手術することもありますが片眼ずつ行うこともあります。中には筋肉の力が弱っていてどれだけ腱膜を縫い縮めても瞼が挙がらない方がいます。その際は後日ゴアテックスという人工の膜を用いておでこの筋肉(前頭筋)の力で瞼を上げる手術を行うことがあります。
(4) 退行性下眼瞼内反:(2)と同様に何らかの原因で下眼瞼を支える膜(LER:lower eyelid retractors)が弛むことで瞼が内側を向いて、睫毛が眼球に接触しています。手術では弛んだLERを縫い縮めて瞼が外を向くようにします。(Kakizaki法)それで不十分または再発する場合には目尻を切って下眼瞼を縫い縮めることがあります。(Lateral tarsal strip)
(5) 睫毛内反:睫毛(まつげ)が内を向いて眼球に接触していることで違和感が出ています。 手術では瞼を支える組織(挙筋腱膜やLERの一部)と皮下を縫い合わせて、余剰の眼輪筋(眼を閉じる筋肉)及び皮膚を一部切除することで睫毛を外へ向けます。(Hotz法)
(6) 睫毛乱生・睫毛重生:睫毛の生える向きが根本的におかしかったり生える場所がおかしい場合は毛根を焼灼する睫毛電気分解を行うことがあります。焼灼によって半分は生えなくなるといわれています。残ったものを再度電気分解することも可能です。
硝子体注射
白目から眼内に直接薬を注射します。
当院では以下の硝子体注射を行っています。点眼麻酔と消毒をして行います。注射そのものは数秒で終了します。
(1) アイリーア硝子体注射:適応疾患は加齢黄斑変性、近視性脈絡膜新生血管、糖尿病黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症、血管新生緑内障です。
(2) マキュエイド硝子体注射:適応疾患は糖尿病黄斑浮腫です。
その他の手術
当院ではものもらい(めばちこ)、翼状片、結膜弛緩、結膜嚢胞、眼窩脂肪ヘルニアなどの手術も行っています。
今後も更に施行可能な手術を随時増やしていく予定です。
お気軽にお問い合わせください。072-622-1132受付時間 9:30-18:00
[ 土曜午後・木曜・日祝除く ]